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鮨屋のカウンター。
俺は久保田を枡で、夏子は白ワインを飲みながら鮨をつまんでいた。
翔太が生意気な口調で注文する。
「オジさん、ウニとアワビと中トロね」
長年通っている鮨屋の大将が威勢良く答える。
「はいよ、坊っちゃん!
今日はいいハマチが入ってますけどいかがですか?」
「じゃあ頂戴」
絵里奈も続けて口を開いた。
「私にもハマチ下さい。あとエンガワ」
俺は夏子と顔を見合わせて苦笑い。
良いのか悪いのか……
俺も夏子も子供にはとことん甘かった。
俺自身が甘やかされて育ったという事と、逆に夏子は貧しい子供時代を送った記憶から、自分の子供達には贅沢させてやりたいという気持ちがあるみたいだ。
自分達の食べたい物だけを短時間で腹に詰め込んだ二人は、
「じゃあね。今から友達と会うから」
短い言葉を残してネオンが輝き出した東京の街に出て行った。
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