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ある晴れた日曜日の昼飯時。
ひとみと健太は朝早くから庭で遊んでいた。
父親の俺から見ても仲の良い姉弟だ。
親にとって、こんなに嬉しい事はない。
操が二人に声を掛ける。
「ひとみ~、健太~、ご飯だよ~!
今日はお寿司~! 」
「わぁ、やったー!」
「あたし、おばあちゃんが作ってくれるお寿司大好き! 」
「おれもー! 」
いなり寿司を頬張ったひとみと健太が、
「うま~い! 」
「おばあちゃんが作ってくれるご飯は全部おいし~! 」
俺は操とお袋を交互に見た。
操は優しく微笑んでいる。
お袋は静かにうなずいた。
(この子達が将来、本物の寿司を食べた時にどう思うだろう? )
俺は少し悲しく、切なくなった。
しかし操は俺にウインクすると、大きな声で言った。
「残~念! 今日のお寿司は母さんが作りました~! 」
「そうなの!? おばあちゃんのと同じ味だよ!?」
健太が目を丸くして言った。
ひとみも続く。
「うん! おいしい! 」
お袋が頷きながら操を見て微笑んだ。
「うん、操ももう大丈夫だねぇ…」
「秀ちゃん、ホント? 」
恥ずかしそうな、それでいて満面の笑みを浮かべて操が言う。
「うん、美味い!
ホントにお袋と同じ味だよ!
でも、味噌汁はまだお袋には敵わないかな? 」
「そうだよねぇ。お母さんには敵わないよ~
お母さん、お味噌汁の作り方、もう一度教えてね! 」
お袋は操を見て静かに微笑んだ。
そんな二人を、ひとみと健太がニコニコしながら眺めている。
お袋は素直な操の事を実の娘のように可愛がってくれる。
俺にはそれがたまらなく嬉しいんだ。
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