第1章

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  「疲れた・・・」  いつも帰ってきたら晩御飯を作り、食べ終わったらその後片付けとそれから簡単な掃除や洗濯を済ましてから、お風呂に入るというのが私の日課となっている。  そのやるべきことをやり終えた私はベッドへ勢い良く飛び乗った。ふかふかな布団に包み込まれて、気持ちが安らぐ。  ふぅ。  一息つく。後は寝るだけなのだが。  一向に睡魔襲ってくることはなく、眠くなるどころかだんだん冴えてきて、どうしても頭に浮かんでくるのは今日の出来事。  未だに夢じゃないか、と疑いたくなるくらい非日常的だった。イケメンの男の人に言われた告白。残念ながら告白というより中身は依頼だったが、それでもまるで少女漫画の世界だった。 「彼女かぁ・・・」  恋愛のしたことのない私にとって未知の世界であり、何をすればいいのか見当もつかない。漫画で見たことはあるが、実際考えても具体的にイメージが浮かばないのはやはり経験がないからだろうか。そんな私が、ましてや修羅場になんかに巻き込まれたと思ったらとてもじゃないけど切り抜けそうにもない。  実際に修羅場となったら洗いざらい吐いてしまいそうだ。そうなっては偽彼女になった意味がなくなってしまう。  提案したのは彼だから流石に手は貸してくれるとは思うけど、やはり私なんかが努まるとは思えないし、選んだ相手が悪いと思う。  でも。  あんなに普通に家族以外の人と事務的なこと以外で話したのは本当に久しぶりで、それが嬉しいと素直に思ってしまった。頼られるというのも私を信用しているからだと思うと嬉しい。  強引だけど悪い人じゃないかもしれない。  なんせ高校生活を始めて、初めての親密な会話だ。また話してみたいな、と自然に思ってしまう。 「だめだめっ! こんなんじゃだめだっ!」  違う違う。きっと彼があまりにもイケメンだったからそう思わせちゃうんだ。非日常的な事だから余計に心が動かされてしまっただけ。  こんなんじゃいつかは流されてしまいそうだ。  1度断っても諦めてないみたいだし、彼女役のことはちゃんと断わらなきゃ。    
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