第1章

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     しかし昨日の決意とは裏腹に昼休みまで彼と会うことはなかった。昨日の今日だしクラスなんて知らない。今まで男子に目を向けたことはなかったが同じクラスではないことはわかった。  しかし他のクラスとなると厄介だ。マンモス校である我が高校はクラスも多く、ましてや普通科以外にも特進科がある。そもそも彼の歳さえ知らない。  情報の無さやクラスの多さに戦意喪失。諦める理由に十分すぎた。  むしろあっちから接触してくると思っていんだけど、彼は彼でもしかしたら他の偽の彼女を見つけ出したのかもしれない。   ということは解放されたのかな?    と思ったのだが。 「なんで・・・いるの」  昼休みを向かえ、いつものあの場所へと行き、荷物を窓際に置いてある席において、お手洗いで席を外して戻って来たら、来た時は誰もいなかったはずが、いつの間にか昨日の彼が向かい合わせにあるもう一つの席に腰を下ろしていて、よう、と笑顔で声をかけてきた。 「な、ななんで?」 「どもりすぎ。ここにいんのかなーって思って来ただけ」  突然の事に対処出来なくてどうすればいいのかわからず、ドアから動けないでいると、 「そんな警戒されると流石に傷付く」  と言われて悲しそうな顔をされた。悪いことしたみたいで少し胸が傷む。罪悪感に襲われ、向かいの席に腰を下ろした。すると満足そうに彼は笑う。  だがしかし。  き、気まずい・・・。   先程の言葉で部屋を離れるという選択肢も失った私は、座ったのはいいものの話題も見付からなければ、顔も見ることすらできない。  友達作りの為に勉強しておきながら、今ではその内容は頭の中からすっかり消えていて我ながら情けない。  とりあえず話題探しから逃げるようにお弁当を開いた。今日はおかかのおにぎり2つときんぴらの人参と大根、アスパラベーコン、ミニトマト、ミニハンバーグ。 「うまそー」  空けると同時に覗き込んできた。そんな彼はというと、お弁当ではなく、買ってきたのであろう袋が机の上に置いてある。 「さ、笹倉くんは・・・パン?」  袋から覗かせるチョコクロワッサンとメロンパン。  って見ればわかるのにわざわざ聞いてしまった。自分の話題の引き出しの無さにちょっと落ち込む。    
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