第1章

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    「今日は終わる時間まで待って、声かけてみるつもり」 「何時に終わるの?」 「閉店時間は7時だから8時には出てくるかな? その後はファミレスかカフェかで食事かお茶を出来たらいいんだけど」 「でも笹倉君警戒してるんじゃないの? いけるの?」 「いかせてみせるわ。女の武器を色々使ってね。まあ本当は喫茶店とかじゃなくて居酒屋に行ってお酒でも呑んで酔っちゃった、とかいって色々したいけど堂々と飲めないのが残念」 「なっ!?」  思わず声に出してしまい、慌てて大袈裟に咳き込むふりをする。自分でも下手だと思うが、どうやら周りから視線が集まった気がするだけで何も言われることはなかった。  それよりもあの可愛らしい容姿から考えもつかないような事を平気で言う彼女に驚きを隠せない。  もしかして笹倉君思ったよりヤバイ子に好かれたんじゃ? 「あはは! 本当グイグイいくね!」  流れていた景色が止まり、駅へと着いた。アナウンスと共に私の向いている側のドアが開き、次々降りていく乗車客の後ろ姿が見える。 「あっ、降りるね。ばいばい!」 「また聞かせてねー!」  降りたあとに振り返った彼女は、さっきまで話していた友達に手を振ると、にこやかな笑顔のまま歩を進めた。  ・・・どうしよう。  彼に知らせた方がいいに決まっているが、連絡先は交換していない。  ○○駅だったら私の最寄駅の2つ隣。  行けない距離でもない。  でもどう伝えただけじゃだめだ。もし逃げることができても今日を乗り越えただけであって根本的な解決にはならない。  どうすれば・・・。  
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