第1章

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   鮮やかに彩ってくれた満開の桜に出迎えられ、始まりを告げた新しい高校生活から早2週間。    漫画にあるような薔薇色の高校生活を夢見ながら上京してきて、これから青春の1ページを描きはじめる。  そんなはずだった。  誰もいない部屋。  机に寂しく置かれるお弁当箱。  会話のない昼休み。  現実は思った程甘くはなく、悲しいことに現在一人で黙々とお弁当を食べている。  高校デビューしてやるぜ!の気持ちで臨んでいたのが2週間前の入学式。どんな子がいるんだろうとわくわくしながら席についた私が目にしたのは四方八方皆男子。男子。男子。この時ほど自分の苗字を恨んだことはない。  苦手ではないが男の子と気軽に話せるわけもなく、気付いたら女の子達は皆近くの席どうしでグループを作っており、思いっきり出端をくじかれた。  卒業した中学から上京してこの高校に入ったのは私だけであり、友達どころか知り合いすらいない。  元々人見知りなのだが、それを変える為に高校デビューしようとしていたのに頭ではわかっていてもなかなか行動に移せず、今こうして世間で言うぼっち飯をするハメになっているわけである。  私が兎なら死んでいたところだ。  場所も教室ではなく、移動教室や部活動の部室ばかりが並ぶ棟のたまたまドアの開いていたちょっと狭い部屋で食べている。  最初は友達作るチャンスだと思っていたが教室で食べようとしていたが、トイレで席を外した途端に席はクラスの男子に座られており、私が近付いても立つ気配がなく、仕方無く弁当だけ手にしてそのまま教室を出てこの部屋に来たのである。  この部屋は両壁を使われていない本棚で囲まれ、机は乱雑に置かれている。壁の奥にある窓から光が溢れ、風がいたずらするようにカーテンをゆらし、窓から見える景色は坂の上にあるということもあって見晴らしがよく、手前には綺麗に咲いた桜の木が並んでおり、風に揺られて花吹雪のように舞い上がる。  今は窓際に机を置き、窓から見える景色を堪能出来て、静かで狭いせいか妙に落ち着く空間を気に入っていつの間にかここで昼食をすませるようになっていた。  お弁当を食べながらいつも一人で高校デビューの作戦会議をするのが私の日常だ。  今日もいつものように、リア充のなり方という題名の雑誌を広げながら弁当の唐揚げを頬張る。
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