第1章

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      “人と接する時は笑顔で”とか“はきはき話そう”か割と基本的な項目の書かれたこの雑誌をにらめっこしながら読む。  リア充というより面接の話じゃん。  買う雑誌間違えたかな、と思いつつも パラパラとめくっていると、突如静かな空間を壊すかのように響きわたるドタバタ音。  普段は私しか出入りしていないんじゃないか、と思うくらい昼休みは静かで誰も来ないのだが珍しい。  何の騒ぎだろ?  好奇心に身を任せて雑誌を手にしたままドアから顔を出そうとした瞬間何かにぶつかって肩に痛みが走り、勢いのあまりによろめく。なんと人が飛び込んで来たのだ。 「ちょっ」 「っ!」  出た言葉は言い切る前にその言葉は相手の手によって遮られ、倒れかけた私の身体は引き寄せられてそれと同時に扉が閉まる音が響き、強引にしゃがみこまされる。  なっ何!?  突然のことや私を捉える大きな力もあってか身動きがとれず、唯一自由である視覚を頼れば、私の口を押えている骨張った手と辛うじて見える黒い色のズボンからして男の人なのは間違いない。  へ、変質者!?  こみ上げてくる不安を振り切るかのように思い切って顔を見上げれば、思ったより近くにあった綺麗な顔立ちの男の人がこちらに目を合わせて唇に人差し指を立て、静かにと合図した。  え? え? 「おーい、笹倉くーん! どこー!?」  廊下に響く女の人の声と共にバタバタと足音が聞こえてくる。徐々に大きくなり、こちらに近付いてくるのがわかる。    
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