第1章

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      慌てて取り返そうとするもひょいっと簡単にかわされた。返すつもりは無いらしい。 「ちょっ!」  文句言おうと見上げれば、既に彼は表紙に刻まれた文字を捉えていた。 「リア充のなり方・・・?」  バレた!! 馬鹿にされるっ!! 「何、彼氏が欲しいの?」 「やっ違う! いや欲しいけど」  その為に買ったものではないから思わず否定しかけたけど正直彼氏は憧れる年頃である。  私は今まで恋愛のれの字すらかすらないほど縁がなかった。告白されたことも無ければ、告白したこともない。それ以前に男の人を好きになったことすらない。おかげさまで年齢=彼氏いない歴の所謂喪女というやつである。  それよりも彼氏以前に私はまだ友達ですら作れていない状況だ。 「ふーん」  興味無さそうな目でパラパラとめくり始める。  絶対引かれたよ・・・。  綺麗な人だし、いかにもリア充っぽそうな人だから絶対わかんないだろう。  ぼっち? きもいとか言ってきたらどうしよう。  どうこの状況を乗り越えようか、と必死に頭を回転させる。やばい。やばい。 「こんな本よりさ、手っ取り早くなる方法あるけど?」  本を閉じ、タイトルが見えるように私に表紙を見せる。 「え?」  どんな罵詈雑言が出てくるのかと身構えていたが、予想外の言葉に思考が止まる。  なんて・・・?  ・・・手っ取り早くなる方法?  聞き返すどころかリアクションもとれない私ににお構いなしに彼は続けた。 「俺のさ、彼女役になんない?」     
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