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「年末は流石に家にいるんでしょ、旦那さん」
「そうね。正月休みはずっと家にいたわ。ということは女と関係が始まったのは今年ってことかしら」
「相手も年末年始は忙しいのかもね」
「そういう事もあり得るわね。三浦さん、冴えてるわ」
誰だって思いつくことなのに、郁美さんは関心したように大袈裟に手を合わせる。
そんなことだから旦那さんに浮気なんてされるのよ。
浮気がバレても旦那さんに、あらそうだったのね、とか言って許してしまうんでしょうよ。
舐められてるわよ、旦那さんにも、浮気相手の女にも。
「じゃあ年末年始は安全ね。良かったわ。私も用事があったし」
「あら、旅行か何か?」
「そうだったらいいんだけど、違うのよ。夫の会社の新年会に御呼ばれしたの」
本当に面倒臭い。
いつもの新年会なら私なんか行く必要はない。
今年は改築社屋の披露も兼ねて、社員の家族も招待された。
私は夫の同僚の奥様連中とは全く面識がないから、行っても楽しくなんかない。
「素敵ねー。何着て行くの? これから見に行く?」
自分のことの様に浮かれ始めた郁美さんは、いそいそと喫茶店を出る支度を始めた。
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