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「今日は関係者も招待しているからな。ああいう人も来ているんだろう」
「そうなんだ……」
夫と私は上機嫌の社長に僅か十秒程度の挨拶を済ませ、会場のテーブルへと戻る。
夫曰くもう挨拶はだいたい済ませたらしく、後は私の好きなようにすればいいと言って、彼は同僚の輪へと入って行った。
一人残された私はただ黙々とテーブルを巡って、普段口にすることが無いような物を食べて回る。
会場を見渡すと私の様に気の利かない夫と離れた手持無沙汰な奥様達が、辺りをきょろきょろと居心地悪そうにしている。
ふと、見知った人物に目が留まる。
いい男はどこに居ても光っていた。
私は口元を拭い、手にしていたお皿をテーブルに置くと、その人の元へと駆け寄った。
楽しくない新年会だと思っていたけれど、一瞬にして辺りが華やかに感じる。
妻が来ていれば、夫の彼も来ていて当然よね。
そう考えながら近づくと、彼の傍らには妻ではない女性が腕を組んでいた。
真っ赤なルージュを引いた妖艶な雰囲気の女は、周囲に笑顔を振り撒いている。
なんなの、あの女は。
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