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鈴は黙って聞いていた。だが、その途中で小さく笑ってしまったのだった。
「あんたは、連れが口下手だと言ったが……あんたも、そう上手いとは思えないね。それに『普通じゃない』と言われて、どうぞどうぞと言う奴が居ると思うか? だが、面白い。条件を出そう。それを了承すれば、一人一杯無料で食べてもらおう」
「本当ですか! 助かります!条件は?」
鈴は手にしている刃物を指で弾いて、こう呟いた。
「一人が食事中、私がもう一人の首筋に刃物を添える。食事を終えたら同じ事をして、もう一人も食事をする。妙な動きをすれば……解るな?」
鈴は当然、そんな事を相手が飲む筈は無いと思っての、提案だった。だが相手の反応は鈴の予想に反して、『普通』では無かった。
「よろこんで!」
鈴は一瞬、拍子抜けして黙ってしまった。しかし相手のペースに乗ってはいけないと、直ぐに鈴は想い直したのだった。
「少し待って欲しい。準備をする」
鈴はその言葉の後、手慣れた手つきで、カレーの皿に炊いてあったご飯をよそい、普通に客に出す様に、カレーを掛けたのだった。
ただし、それは一杯だけだった。
それをカウンター横にある、中央の二人掛けの席に置いたのだった。
一杯の水と、一杯のカレーに、一本のスプーンを二人掛けの席の奥側に置いたのだった。
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