937人が本棚に入れています
本棚に追加
一人暮らしの俺を起こすものは居ないので、セットした携帯のアラームだけが頼りだ。
このアラームをセットし間違えると確実に会社には行けない。
俺は眠い目を擦りながら、洗面所でうがいする。
『あいつらも、ちゃんと起きれたのかな?』
鏡に映った覇気のない自分の顔を見て、昇平と宮永の事を思い出す。
昨日の疲れをリセットさせたい俺は、冷水で勢い良く顔を洗う。
段取り良く着替えと朝食を済ました俺は昇平にメールを送る。
【起きれた?】
短文を送ったからか、それ以上に短文が帰ってくる。
【無理】
何が無理なのか不明ではあるが、その二文字からは切羽詰まった雰囲気が伝わってくる。
俺はリュックを背負い、会社に向かって自転車を漕ぎ始めた。
先週よりも風が冷たく感じる。
街路樹の木々もほんのりと赤くなってきていた。
『確かに、社員旅行で山に行くにはちょうどいい時期かもな……』
季節の移り変わりを感じている間に、会社の駐輪場に到着した。
最初のコメントを投稿しよう!