第二夜:大貴と昇平

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社員旅行と言っても、システム改善部の俺たち三人と社長、事務、営業合わせて12人。 会社の前には小型のバスが停車し、続々と荷物の積込みが始まっていた。 俺も背負っていたリュックを腕に掛けてバスに近づく。 運転手に荷物を手渡した瞬間、社長がイライラした口調で話しかけてくる。 「おい山藤、後は安田だけなんだが何か聞いてないか?」 パンチパーマをボリボリ掻きながら、土佐犬のような顔で睨む社長。 昇平から来た【無理】という二文字のメールを思い出したが、「さぁ、なんか忘れ物でも取りに帰ってるんすかね」とだけ伝えた。 出発予定時刻を10分程過ぎた時、タバコを咥えて自転車を勢い良く漕ぐ昇平が姿を現す。 社長はバスの窓を開けて「早くしろ!」と絶叫している。
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