第二夜:大貴と昇平

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自転車から降りた昇平はタバコを指で弾き落として踏みつけ、バッグを運転手に渡してすぐにバスへ乗り込む。 一斉に白い目が昇平に注がれ、冗談混じりのブーイングが飛び交う。 昇平は頭をペコペコさせながら、一番後ろの席でゆったり座っている俺の隣に腰を下ろした。 「メールで無理って二文字が来たの、マジだったんだな」 「あぁ、ギリギリ間に合うかと思ったけど無理だった。社長、怒ってた?」 「あぁ、寺についてから昇平だけ座禅三時間だってさ」 ひとつ前に座っている後輩の宮永もひょっこり顔を出し、笑いながら話しかける。 「いやぁ、安田先輩災難っすねー。とりあえず坊さんに肩叩かれて変な声で叫んだりしないでくださいよ?」 「お前ら、他人事だと思って……」 俺たちがそんな会話を笑いながらしていると、バスはゆっくりと動き出す。
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