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適度に揺れるバスは、睡眠不足の俺たちにとっては揺り籠でしかない。
発進した瞬間は盛り上がっていた会話もいつの間にか無くなり、俺も昇平も宮永も眠りについていた。
ーーーーそれから2時間ほど経過しただろうか。
バスの揺れ方に異常を感じた俺が目を覚ますと、前方に座っている社長や事務のスタッフも焦った様子で運転手に声を掛けている。
「おい、眠ってるんじゃないだろうな!こら、起きろ!」
社長は座席から立ち上がって運転手のそばまで行こうとするが、尋常ではない揺れに立っているのがやっとだ。
事務の女性陣は金切り声のような悲鳴をあげている。
その声で、身体をビクつかせて昇平が目覚める。
「なんだ、なんだ?何が起こってる?」
目を擦りながら、車内の異様な雰囲気に焦る昇平。
「運転手が眠ってるみたいだ……」
俺がそう告げると、昇平は完全に目が覚めたのか、未だに眠り続けている宮永の頭をペシペシと叩いて起こす。
その時だった。
俺たちの座っている車体後方が浮きあがり、一瞬だけ無重力のような状態になる。
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