第二夜:大貴と昇平

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俺たちの身体は浮き上がって天井に激突して再び座席へ落下する。 どうやらバスはガードレールを突き破り、頭から山を滑り落ちているようだ。 フロントガラスが割れるのをきっかけに、両サイドのガラスも前から順番に割れていく。 割れた窓から尖った木や枝が入り込んでくる。 前方に乗っている事務員や営業部員の身体にガラスの破片が突き刺さっているのか、血飛沫が車内の壁に飛び散る。 目の前で広がっていく地獄のような光景に、叫び声すらあげることができない。 ある程度滑り落ちた処でバスは一瞬止まったかに見えたが、ぐらついた車体は轟音と共に90度に傾き、頭から再び落ちていく。 今度は滑り降りるのでは無く、完全に落下しているということが、窓ガラスから見える景色ですぐにわかった。 『死んだ』 きっと昇平も同じ事を思ったはずだ。 バスは勢いを緩める事なく、山の中腹部に転落した。 それと同時に思考回路は停止し、意識が完全に飛ぶ。
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