第二夜:大貴と昇平

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「昇平……」 久しぶりに声を出したからか、大きな声が出せない。 俺は喉を鳴らしてから再び同じように呼びかける。 「昇平!!」 先ほどよりも大きな声が出た。 しかし、俺の呼びかけに反応する人間は一人も居ない。 バスの前方は生存確認する意味が無いほど、人間の形を崩してしまった死体で埋まっている。 社長の腕なのか事務員の腕なのかも分からない状況。 バスの中間地点から後方はそこまで崩れては居ないものの、倒れている同僚の出血量を見た次第では生存者は存在しないとしか思えない。 この状況で軽い切り傷で済んでいる俺の方が異常なんだ。 「そうだ……とりあえず警察……」 バスが転落したという情報は既に警察やメディア関係には伝わっているとは思うが、念のためにスマートフォンを取り出して画面をタップする。
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