第二夜:大貴と昇平

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タップしてすぐに、この場所が圏外であることに気づく。 頭の上で何度もスマートフォンを振りながら、電波が入ってこないか試してみるが、圏外の表示は一向に変わることは無い。 俺が大きな溜息をついた瞬間、前方から呻き声が聞こえてくる。 「うぅ……あ……う……」 俺はすぐに声に反応し、宮永や営業部員の死体を乗り越えて前方に目を向ける。 すると、布団が干される時の様な状態で椅子に身体を被せた昇平が、身体を震わせながら小さい呻き声をあげていた。 「昇平!!」 俺は昇平に近づいて傷の確認をする。 頭部から出血をしているが、血の量から判断すると深い傷ではなさそうだ。 その傷よりも、膝を突き破って骨が少し見えている右足の方が重傷だ。 警察も救急車も呼べない今の状況では、動ける俺が応急処置をするしかない。 救いは昇平の意識があるということ。 俺は昇平に語りかけながら、両脇に腕を通してバスの中に寝かせる。
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