第二夜:大貴と昇平

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キーボードの隣に山積みになっているシステム改善書類を両手で抱えて整頓した俺は、何杯淹れたのかわからないコーヒーカップに手をかける。 残り一口のコーヒーを飲み干し、目頭を押さえて大きな溜息をつく。 俺の名前は山藤大貴、歳は今年で25歳になる。 この会社で働き初めて1年。 入社した当時の目の輝きは既に消え、目の下に大きな隈を作る毎日を過ごしている。 周りを見渡すと、俺と同じように頭を抱えている同僚が2人。 どうやらその2人も改善書類のまとめが終わったらしく、安堵の表情を浮かべている。 「今日もこんな時間か……そろそろ俺ら死ぬんじゃね?」 斜め後ろに座っていた黒縁眼鏡の同僚が諦めたような表情で笑いながら呟く。 「死ぬ前に訴えなきゃいけませんね……」 俺の左隣に座っている茶髪の同僚が笑いながらそう言って椅子で猫のように背伸びする。
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