第1章

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下校の時間となった。今日は雅也のことで頭が一杯で、授業にも友達との会話にも身が入らなかった。まぁ仕方がない。  帰る身支度をしていると、千夏が声をかけてきた。 「ねぇねぇ毬奈、マックにでも寄ろうよー」 「・・・ぁぁ、ごめん千夏、今日ね、ママのお迎えなの。千夏も送ろうか?」  えー、と残念そうな声をあげる千夏。暫くこれが続くのかぁと、心の中で落胆するあたし。すると俊太が話しかけてきた。 「俺も行きてぇなぁー、マック。帰り毬奈を送ればいいんだろ?」  簡単にいう俊太にあたしは怪訝な表情を浮かべる。 「そーゆー問題じゃないの」 「なんだよ。用事あるのか?」 「・・・ないけど・・・」  そりゃああたしだって、みんなと遊びたいよ・・・。 「じゃあいいじゃん、毬奈おかんには、俺と千夏からよーく話してみっからさ。どう?」 「・・・。多分ダメだけど、好きにしたら?」  あたしは2人を無視するように、廊下へ向かった。2人というか、俊太を。 そのまま校門へ向かう。ママはしっかりと車を停めて待っていた。 2人が追いかけるようにあたしに付いて来る。 あたしは助手席のドアを開けた。 「ママ」 ママはにっこり笑ってあたしに言う。 「おかえり。毬奈」 「・・・あのね、何か友達がね・・・」 事情を説明しようとした矢先、後ろから2人が顔を覗かせる。 「初めまして毬奈ママー岩崎千夏でーす」 「どうもー矢野俊太です!」 ママはビックリしつつも笑顔で答える。 「あ、あら・・・学校のお友達・・・?こんにちは。千夏ちゃん、俊太くん」 その言葉に俊太が返答する。 「いやー、俊太だなんておかあさん、俊太だなんてそんな、照れ死にます」 目を手で覆い天を仰ぐ俊太。あたしはすかさず冷めた目で見る。 「馬鹿じゃないの・・・」 そんな様子を見ながら、ママは言った。 「毬奈。お友達、お家へ連れてくるの?いいのよ全然」 その言葉に黙ってると俊太が再び答えた。 「いやー、お母さん、実は・・・僕ら3人、密談がありまして・・・」 ママがぽかんと口を開く。 「・・・密談?」 「はい。それで、必ず千夏さんと家の玄関まで送り届けますので、30分ほどすぐそこの、駅前の、マクドナルドへ行かせてもらえないかとご相談に伺いました。30分です。必ず二人で送り届けます」 ぽかんと開いたママの口が更に開く。 「まぁ・・・まぁ・・・」
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