10人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
下校の時間となった。今日は雅也のことで頭が一杯で、授業にも友達との会話にも身が入らなかった。まぁ仕方がない。
帰る身支度をしていると、千夏が声をかけてきた。
「ねぇねぇ毬奈、マックにでも寄ろうよー」
「・・・ぁぁ、ごめん千夏、今日ね、ママのお迎えなの。千夏も送ろうか?」
えー、と残念そうな声をあげる千夏。暫くこれが続くのかぁと、心の中で落胆するあたし。すると俊太が話しかけてきた。
「俺も行きてぇなぁー、マック。帰り毬奈を送ればいいんだろ?」
簡単にいう俊太にあたしは怪訝な表情を浮かべる。
「そーゆー問題じゃないの」
「なんだよ。用事あるのか?」
「・・・ないけど・・・」
そりゃああたしだって、みんなと遊びたいよ・・・。
「じゃあいいじゃん、毬奈おかんには、俺と千夏からよーく話してみっからさ。どう?」
「・・・。多分ダメだけど、好きにしたら?」
あたしは2人を無視するように、廊下へ向かった。2人というか、俊太を。
そのまま校門へ向かう。ママはしっかりと車を停めて待っていた。
2人が追いかけるようにあたしに付いて来る。
あたしは助手席のドアを開けた。
「ママ」
ママはにっこり笑ってあたしに言う。
「おかえり。毬奈」
「・・・あのね、何か友達がね・・・」
事情を説明しようとした矢先、後ろから2人が顔を覗かせる。
「初めまして毬奈ママー岩崎千夏でーす」
「どうもー矢野俊太です!」
ママはビックリしつつも笑顔で答える。
「あ、あら・・・学校のお友達・・・?こんにちは。千夏ちゃん、俊太くん」
その言葉に俊太が返答する。
「いやー、俊太だなんておかあさん、俊太だなんてそんな、照れ死にます」
目を手で覆い天を仰ぐ俊太。あたしはすかさず冷めた目で見る。
「馬鹿じゃないの・・・」
そんな様子を見ながら、ママは言った。
「毬奈。お友達、お家へ連れてくるの?いいのよ全然」
その言葉に黙ってると俊太が再び答えた。
「いやー、お母さん、実は・・・僕ら3人、密談がありまして・・・」
ママがぽかんと口を開く。
「・・・密談?」
「はい。それで、必ず千夏さんと家の玄関まで送り届けますので、30分ほどすぐそこの、駅前の、マクドナルドへ行かせてもらえないかとご相談に伺いました。30分です。必ず二人で送り届けます」
ぽかんと開いたママの口が更に開く。
「まぁ・・・まぁ・・・」
最初のコメントを投稿しよう!