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暫くママは無言となった。
あたしたち3人も無言となった。
あたしは言った。
「ごめんママ。無理ならいいの。誘われたから、一応聞いたの。心配させてごめんね」
うつむくあたしの顔をママは見る。そして2人の友人たちの顔を見る。
そして口を開いた。
「必ず送り届けてくれるんですよね?約束してくれますか?」
「はい!」「はい!」
二人は同時にそれは元気に答えてくれた。
「この子は・・・」
ママはハンドルの方を睨むように見て、暫く黙る。そして意を決したように口を開いた。再び二人を見る。
「この子は、ストーカーに狙われているの。だから絶対に一人にしないで下さいね」
「え・・・」
「え・・・?」
千夏と俊太の声色が変わった。それじゃあ、と言って母は助手席のドアに手を伸ばし閉めると、車を発進させて恐らく家へと向かった。
3人の間に流れる沈黙。
千夏がぽつりと言う。
「・・・あんたが・・・男嫌いって・・・そういう事・・・?」
「え?・・・ぁぁ・・・うん、まぁ・・・うん」
俊太が言う。
「何で今まで言わなかったんだよ・・・」
「なんでって・・・いう機会ないし・・・」
・・・それにストーカーじゃないし。とかね。
再び流れる沈黙。
しかし千夏は言った。
「まぁ、そうだよね。そんな事言い辛いよ。わかるよ私。辛かったね、毬奈」
本当の内容はもっと酷いけれど、そう言ってくれた千夏に深い感謝の気持ちを覚えた。
「ありがとう・・・千夏」
その後も暫く黙っていた俊太が口を開き、ぼそりと言った。
「千夏のおかんがどうしても送り迎え無理なときは、俺が送る」
それだけ言って、マクドナルドがある方へ歩き出す。
「行くぞ。チキン竜田が俺を待っている」
何だか照れくさそうな俊太だ。
あたしは俊太に駆け寄った。
「ありがとう、俊太」
目一杯笑ってみせる。
すると目一杯顔面が赤い俊太。
「顔がチェリーみたいだよ?俊太」
「おい。それは色んな意味で酷いぞ。色んな意味だぞ、わかってんのか」
笑うあたし。置いてかないでよーと駆け寄る千夏。
高校生活。手放したくない。些細な思い出を作って行きたい。
あたしを陰から見る男になど、一生気付きたくなどなかった。
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