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「俺が昔戦闘中負傷してセトウチの海に落ちて死を覚悟した時、確かに見た。
忘れるわけねーあの堂々とした姿を」
「んなもん死に際に見た幻覚にすぎねーとは思わなかったのかよ」
「思わなねーな」
核心を持ったサセトの言い方にマリアは、こいつはただのアホなのか?と一瞬思った。だが、
「おもしれぇ、なら成功した暁にはその伝説の魚をこちらにもよこせ」
「いつになんのかわからんがな。
あんたらの資料のおかげで成功したのならうまいもん食わせちゃるわ」
「契約成立だな」
そういうとマリアはデスクに置いてあったいくつかのタブレットを取り、展開させる。
その資料をサセトは食い入る様に見ながら必要な情報をタブレットへメモする。
「おい、こんな座ってばっかじゃいい加減退屈だろ。
ちぃとばかし付き合え」
「は?」
一通り資料に目を通した終わったサセトへマリアがニィっと笑って外を指差す。
それに一瞬嫌な予感がしたサセトであったが、有無を言わせぬマリアの顔に、諦めのため息を一つついた。
そしてサセトが帰路についたのは既に日が沈んだ後であった……。
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