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きっと、私の顔は赤くなってる。
熱が顔に集中したのを感じているから。
「…………図星、かしらね?」
どちらのことを言っているのだろう。
いや、どちらにしても、当たっているのだけれど。
「貴女のお名前は?」
「…………上之園 里津(うえのその りつ)です」
鼻にティッシュを詰めた女の子の屈託のない笑みに、私は素直に名乗った。
「じゃあ、里津。良ければ、私たちと友達にならない?」
「私の彼女の綾音。私は友里。私たちで良ければ、貴女の涙の理由を聞かせてちょうだい?」
眩いほどの笑顔と、堂々とした二人の誘いは、私がこの一週間に求めていたもので。
戸惑いが胸の奥にあったけれど、私はすがるように頷いた。
「ありがとう。ずっと……悩んでいたの……」
満員のバスの中。私の口元に自然な笑みが浮かぶ。
この出会いは、きっと私の勇気になると……根拠のないものが沸き上がり、二人の世界へ足を踏み入れた。
『垣間見た光景』終
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