垣間見た光景

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   どう見ても、大丈夫とは思えない。  鼻血が、出てるのだから。  だというのに、鼻血の女の子はキラキラと輝かせた瞳を仰がせていて。  黒髪の女の子はクスリと笑いを溢すくらいで、何もしようとしていなくて。  隙間もないけれど、私は前方の人にぶつけながら鞄を持ち上げた。  ティッシュを……取り出そうとしたのだ。  けれど、 「ひゃっ!」  驚いた声が聞こえてきて、私は直ぐ様そっちへ視線を向けた。  声からすれば、鼻血の女の子の声。  驚いたその声色に、私の鞄の中を探る手が止まる。  何故だろう。とても、彼女の顔が赤い。 「ど、ど、どうして……耳なんて舐めるのよ!」  え……? 今、なんて言った? 「ふふっ、貴女が浸る三鷹に私が似ているのでしょ? 何をされても良いって言ってなかったかしら?」  耳を舐めたことを否定せずに、彼女たちは小声ながらに話していて……私の胸がトクリと動いた。  女の子同士だというのに、そんなことをしてしまえる彼女たちが……羨ましいと、胸の内側がじわりと熱くなる。 「いや、あ、あの、そうなんだけど……だからって、耳の穴は……」 「嫌なの?」 「い、嫌というか……その」 「貴女は、私の彼女なのよね? お付き合いしているのよ? 好きな子を、好きなだけ味わう権利が私にはあるわ」  次は、トクリと音をたてて胸が熱くなった。  聞いてしまえば、視界が滲む。  付き合って……るんだ。  女の子同士でも、この二人は……結ばれてる。  私が望むものを……二人は持っていた。 「あ、味わうなんて、ハレンチよ、朝から!」 「おかしいわね。そうは言っても、本当に嫌がってるようには見えないわ。 本当は……もっと私にして欲しいんじゃないの?」 「そ、それは……その」  楽しげな表情をする黒髪の女の子。  顔を真っ赤にしながらも、口ごもるボブヘアの女の子。  どう見ても……カップルだ。  言葉もそうだし、気づいてしまえば……雰囲気がそう語ってるようにしか思えない。  
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