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中途半端に上がった鞄に突っ込んだ手を動かす。
そこから、ティッシュを取り出した。
羨ましい仲を見せつけてくれた二人は、僻みたくなるほどに眩しくて。
でも、私は……自分が変じゃないと少しは思えて。
何故なら、二人はとても幸せそうなのだ。
どれだけ鼻血が出ていても、とても幸せそう。
同性を好きになったことを、あたかも普通のことだと言わんばかりに堂々としていて。
そこには、世間の視線なんて関係ないほどの愛情が垣間見えて。
誰にも止められないと目に見えて分かってしまえば、それが愛だと示されている気がする。
「これ、使って?」
手を伸ばして、二人に差し出した。
小声じゃなくて、ちゃんと聞こえるように声を出す。
そうすれば、二人がこちらに視線を向けて、黒髪の女の子が綺麗に微笑んだ。
「ありがとう。一枚頂くわ」
「一枚と言わずに、全てあげる。ひどい鼻血よ」
微笑まれて、私も口元に笑みを浮かべる。
鼻血が、本当にひどいものだから。思わず笑ってしまったのだけど。
何故か鼻血の女の子はティッシュを一枚抜き取って鼻に詰めると、私にポケットティッシュの袋を返してきたのだ。
「貴女の方が、必要よ。絶対に」
「そうね。なんて顔をしているのかしら。
涙が出ているわよ、平気?」
「え…………」
言われて気づいた。
私の目から涙がでていたことに。
二人が眩しく感じたのは、涙のおかげで光がキラキラと見えていたからなのだろう。
いや、本当に眩しかったこともあったんだと思う。
「平気よ。なんだか……安心しちゃって」
口から紡いだ言葉は、本音だった。
こんなところにも、同性を好きになれる人がいて。その人たちは、私からすれば不安を打ち消すほどの幸せを醸し出していて。
誰にも相談できずに、私自身が変だと辛く思っていたものを……簡単に覆すほどの安堵を与えてくれた。
「……ふふっ」
黒髪の女の子が、笑った。
そして、ティッシュで涙を拭く私の肩に手を置く。
「ずっと、私達を見てたでしょ? それと、何か関係があるのかしら?」
「……っ!?」
見透かされるような言葉と、見ていたことがバレた恥ずかしさが胸に込み上げた。
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