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むかし、むかし。
あるところに。
一匹の亀がおった。
亀は、ある時ふと思った。
「ああ。何で僕は亀なんかに生れちまったんだろう。素早く地を這う、蛇にでもなりたかったなぁ。」
やがて亀は死に、その魂は蛇の胎児へと宿った。
元亀の蛇は、ある時ふと思った。
「ああ。何で僕は蛇なんかに生れちまったんだろう。自由に空を飛ぶ、鳥にでもなりたかったなぁ。」
やがて蛇は死に、その魂は鳥の胎児へと宿った。
元亀の元蛇の鳥は、ある時ふと思った。
「ああ。何で僕は鳥なんかに生れちまったんだろう。力強く地を駆ける、牛にでもなりたかったなぁ。」
やがて鳥は死に、その魂は牛の胎児へと宿った。
元亀の元蛇の元鳥の牛は、ある時ふと思った。
「ああ。何で僕は牛なんかに生れちまったんだろう。人に可愛がられる、犬にでもなりたかったなぁ。」
やがて牛はステーキになり、その魂は犬の胎児へと宿った。
元亀の元蛇の元鳥の元牛の犬は、ある時ふと思った。
「ああ。何で僕は犬なんかに生れちまったんだろう。自由で奔放な、猫にでもなりたかったなぁ。」
やがて犬は死に、その魂は猫の胎児へと宿った。
元亀の元蛇の元鳥の元牛の元犬の猫は、ある時ふと思った。
「ああ。何で僕は猫なんかに生れちまったんだろう。色んな知識を持つ、人間にでもなりたかったなぁ。」
やがて猫は死に、私が知る魂の行方はそこまでである。
ところで、何で私は人間なんかに生れてしまったのだろう。のんびり池で暮らす、亀にでも・・・
いてっ。
何だろう。
後頭部に原因不明の痛みが。
・・・ん?
頭の中に、声が響く。
”いいかげんにしろ”
と。
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