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ガラガラガラと店のシャッターを閉め、鍵をかける。
ふぅとため息をついて真希が腕時計を見ると、針はちょうど12時を指していた。
「あ、終わっちゃった」
今年もようやくクリスマスが終わった。
毎年クリスマスイブとクリスマスは、母の日の次に忙しい。
12月に入ると年明けまで、ほとんどまともに休みもとらず、ノンストップで過ぎていく。
クリスマス当日の夜には会社帰りの男性客が、色々と迷った挙げ句に彼女や妻へのプレゼントとして花束やプリザーブドフラワーを買いにやってくる。
真希が店長を勤めるこの小さなフラワーショップでも、イブのたった1日で30万以上の売上があった。
「もしもし、タッちゃん?…うん、いま終わったとこ。悪いけど迎えに来てくれない?」
真希は寒さに凍えそうになりながら、携帯電話に向かって言った。
「…えっ?もう出てるの?」
電話の向こう側で少しだけ不機嫌そうな声が聞こえている。いつものことだ。運転手が不機嫌だろうが何だろうが、高いタクシー代を支払うよりはずっといい。
「ありがと。さすがタッちゃんだな…。うん、待ってる」
真希は電話を切ると、小走りで近くの自動販売機まで行き、缶コーヒーを二本買った。
「あったかい…」
真希はフラワーショップの黒い制服の上からそのまま羽織ったフリースのポケットに、缶コーヒーを押し込んだ。
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