第1章

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『了解しました。では10時に埠頭でお待ちすればいいんですね?』 (よしっ! パターン12やっ!)  ついにサタン……村田が条件を飲んだ。三人、顔を見合う。 「おっけー。じゃあ10時に会いましょう♪ 反撃したり交渉の間にヘンな事したら後が怖いからな!」 「今度は秘密通路は使えないようトラップを仕掛けた。無駄なことはしないことだ」 『その事ですが、実は一つこちらの提案があるんですがいいですか? もちろん皆様にとって都合のいい交換条件があるのですが』 (な……なんやってぇ~!?)  飛鳥は慌てて機材を操作している宮村を見た。  一応村田が何か別の提案をしてくるケースも想定していたがそれらはどれも交渉成立前を想定したもので、条件を飲んだ後向こうから提案してきたとき用のものは用意していなかった。 【一蹴する】というパターンはある。  だが、今の村田の提案は聞くべき価値があった。【都合のいい交換条件】は何なのか、どんなものを札として出してくるのかも興味がある。  今は拓とサクラは沈黙している。【考えているモード】のパターンを流しているが、そうそう長く流せるわけではない。洞察力の優れた村田に少しでも違和感を感じられたら終わりだ。 (10秒後、パターン15の頭だけ、その後パターン11で繋げて。流すからタイミング見て切り替えて!)  宮村が飛鳥に向かって囁く。飛鳥は頷いた。  拓とサクラは見つめ合っていたが、ふいにサクラがカメラに向かって指差す。 「今更何を言うんじゃいっ! そんなもんどーでもいいわいっ!」 (今やっ!)  さらにサクラが言おうと口を開けた瞬間画面を切れ変えた。するとサクラを制している拓の映像に切り替わった。 「まぁ待てサクラ。聞くだけは聞こう」 『…………』 (誤魔化せたかぁ~?)  飛鳥は背中に冷や汗が流れていのを感じた。切り替えのタイミングはバッチリだったのだが、元の素材が元々系列が違い、よく見ればサクラと拓、二人の動きがスムーズでなく、一瞬だが動きがワープしてしまった。夜の薄暗い中、低解像度のカメラだから注意深く見ていなければ分からないはずだが……  数秒、いやな沈黙が流れる。だが…… 『提案というのは他でもない、残されたファイナル・ルールのヒントをお教えします。その代わり、あくまで立会人として貴方方をガードしている【正義の死神】に出てきてほしいのですが』
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