第1章

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入口のレディは不思議な顔をしてうちのことをうっとり見ているよ。地獄のレディはみんなシャイなんだね。 『ちがうよ!よっちゃんが見えたんだワン』 『ぼくは妖怪だから見えないモノには見えないんだよ』 『やっぱり酒井だワン!』 薄暗い廊下の先にある、事務所のドアの前でよっちゃんが珍しく強く言ったよ。 『桃ろくのことは、酒井は聞いちゃダメだからね!』 『酒井が知り合いだと思われるだけで、迷惑だワン!』 そうだね、レディのやきもちはこわいからね・・・グヒヒ。 地獄の事務所だから、きっと怖ろしいと思っていたけど、ごく普通の事務所だね。 トイレシートと新聞紙をセットしてパトちゃんを撫でているお人形レディを見ていたら、奥に座っている大きなおじさんがうちたちに言ったよ。 「ほう、珍しい組み合わせだな」 なんだか、よっちゃんを見ているよ。 『こんにちは』 よっちゃんはおじさんに近づいて、どこからかキラキラする封筒を出して渡したよ。
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