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 たまの会社の休み。  私は山登りのコミュニティで知り合った少年に、日帰りで行ける絶好の穴場を教えてもらった。そこの山頂での出来事だった。  眼下には深い谷が見えており、そしてその向こう側もまた、険しい山となっていた。少年の言うとおり、私が登ってきた山は私のようなアマチュア登山家でもなんとか登ることのできる程度の山だったが、向かい側にそびえる山はどうも難易度が高そうだった。夜明け前に家を出発して、えっちらおっちらと、疲労感と解放感とを感じながら登って、正午過ぎにようやく着いた場所だった。  持ってきたお弁当を広げ、シートに座って登山靴を脱ぎ疲れた足を投げ出す。  そして、お弁当のおにぎりを手に持ちながらごろりと寝転がった。  快晴の空の下、7月にしては肌寒い空気を胸いっぱいに吸い込む。  その時のことだ。  反対の山から声が聞こえた。  「やっほーーーーーー!」  珍しいことに面食らいながらも、まあ、有り得ないことではないことに私は苦笑した。すると遅れて背後から「やっほーーーーー!」と声が返ってくる。山彦だ。そこまで考えて不思議に思う。声が反響できるような大きな何かが後ろにはあっただろうか。  振り返ってみて、私は思わず絶句した。  どうやって来たのか、とてつもなく軽装の女性がいたのだ。
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