第1章 逮捕

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警察署に向かうワンボックスカーの車内では 本格的にではなく 触り程度に いくつかの質問が飛んできた 僕は 何も答えなかった 答えられなかった 絶望感にうちひしがれて 生まれてはじめて 本当の意味での虚脱感というのを感じた気がした 気が付くと その後僕が数ヶ月過ごすことになる警察署に到着する所だった 多くの報道関係者が 僕を待ち構えていた カメラのフラッシュが 眩しかった 警察官は丁寧に 『下を向いていた方がいい』 と言ってくれたけど その時の僕には そんな事はどうでもよく思えた 家族や友人の顔が 頭の中に思い浮かぶ それが僕の意識の全てだった この日から 長い拘留生活が始まる事になる 先に逮捕されていた共犯者は9名 僕が最後の逮捕者だった 株や社債の取引を装った振り込め詐欺 これが 僕達が 僕が犯した罪 被害額は 3億円にものぼると そう報道されていた
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