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少々不機嫌な美咲に男たちはビクビクと怯える。
さっさと書き終えた美咲は松坂に紙を渡す。それを松坂は仰々しく両手で受け取った。
「そ、それじゃあ俺もさっさと書き上げるかな」
いつものようなかっこつけの口調など忘れ、松坂も素早く書き上げる。
もし京介がいなければ臨也と松坂は間違いなく殺られていた。
そして、一時間もかからずに全て書き上がりついに完成した。四人の結晶である小説が!
「やっと終わった、早く帰って溜めたアニメ見よ。あ、松坂悪いけど輝元にこれ届けてくれる?」
「は? なんでだよ」
「俺輝元の家知らないし。頼むよ、お前らそこそこ仲いいだろ?」
「仕方あるまい」
臨也と輝元がそう会話する中、別な二人はこんなことを話していた。
「きょ、京介・・・。明日、どうしよっか?」
「いや、あれ臨也が適当に言っただけで・・・」
「私ちょっと欲しいものもあるしさ、買い物いかない!?」
「いや、だから臨也・・・」
「そ、それじゃあ後で連絡するね! それじゃ!」
「え、ちょ」
そのまま美咲はそそくさと小走りで帰ってしまった。
京介の前だとテンパることが多々ある美咲。京介はもはや何を言うこともなく明日の予定が立ってしまった。
「さて、帰るか」
「臨也、ちょっと話が」
「帰りに幼稚園よってくか?」
「うん!」
京介はとても嬉しそうな表情で、臨也と共に教室を出た。
一人教室に残った松坂は帽子を深くかぶり、何故か鼻で笑うと一人で帰路についた。
その夜。輝元という男は、一人机の上に置いてある紙を見つめていた。
園崎臨也に挑んだ挑戦。それが早くも今、目の前にある。ほぼ冗談で言った発言なのでまさか本当に来るとは本人も思っていなかった。
「まぁいいや。これが面白かった漫画にして投稿すれば・・・」
そんな邪な思いを秘め、輝元は目を通した。
そう、通してしまったのだ! その内容とは!
~メモリーズ~
唐突だがここで昔話をしよう。それは小さな出来事かもしれない。他人から見れば些細でどうでもいいことかもしれない。でも、私には関係ない。それはどんなに些細なものでも、私にとってはとても大切なことなんだから。彼との出会いは今でも鮮明に覚えている。それは気のせいだった。やっぱ思い出した。やっぱ忘れた。
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