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「じゃあ、自主練習してくださーい」
先生の、ゆるーい号令で、
整列していたみんなが、籠に入ったラケットを取りに、動き出す。
私も無事ラケットを手にし、真っ白ふわふわな雲が浮かぶ、
空へかざした。
「うほぉぃ、綺麗なラケットげっとったです!」
さらさら、むにむにした、握り心地の良いグリップ。
ぴーんと張ったガットに、恐る恐る手を触れようとした、
瞬間。
「――ぅひゃっ!?」
「コト、こっち!」
――その手を掴まれてしまいました。
「おおう!? ナニゴト!?」
「何事じゃないよ! 早くしないとコート使えなくなっちゃうよ!」
「おおおう!?」
ふわふわな髪を一つに束ねた――アッキーちゃんにしょっ引かれて、ずずずいっ、と満員御礼なコートへと踏み込む。
そこで、
「お待ちなさい!」
「ふぁ!? ルイ!」
叫ぶと同時に、急にアッキーちゃんが立ち止まった。
目の前の、ふわふわな髪に顔が埋まる。
「んンー、いい匂~い。空の雲と、おんなじですぅ」
「ちょ、コト、やめてよ~」
あはは、とくすぐったそうに笑う。
そんなアッキーちゃんの様子に、
私も楽しくなって、もっとすりすりとするのです。
「は、離れなさい!!」
「むぉっ!」
震える声で、私たちを引っぺがそうとするのは、
ルイちゃん。
「ルイも一緒にやる?」
アッキーちゃんがルイちゃんの顔を覗き込む。
なんでかルイちゃんはイライラしちゃっているらしく、
頬を赤らめながら、ワナワナと震えた。
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