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「けほっ。」
羽織った瞬間、千晃の香りがしてむせた。
「大丈夫?」
顔が熱くなるのを感じて、うつむきながら、平気だと答えた。
「じゃあ、またな。」
千晃が見れないまま、振り返って歩き出した。
ギュッ。
??
千晃が俺のジャケットの裾を掴んだ。
ドキッ。
俺の心臓が掴まれたように感じて焦る。
トン。
背中に千晃の頭があたると、一緒に千晃の香りが鼻をくすぐる。
自分の心臓を落ち着けるように、ゆっくりと振り返った。
「あ…ごめん。」
うつむいたまま千晃が言うので、俺は出来るだけ優しく、千晃を抱きしめた。
「千晃。」
小さな千晃は、抱きしめるとふわふわしていて、少しでも力を入れると、消えてしまいそうだと思った。
優しく、優しく…。
自分に言い聞かせて、何も言わない千晃を抱きしめていた。
ガン!
「イッテェ!」
あれ?数時間前にもこんな事が…。
そう思いながら、振り返ると、直也先輩が立っていた。
「家の前で何やってんだ。」
「直くん!」
「直也先輩。」
頭をさすりながら、直也先輩の手を見ると、アルミのフタのような物を持っていた。
何それ…。
直也先輩はゴミ捨て場に、それを戻して来ると、またな。と言って、帰って行った。
「なんなんだ?」
「直くん…。」
2人で顔を見合わすと、おかしくなって、声を出して笑った。
やっぱり、千晃は笑顔が一番!
人生初デートは最高の笑顔で終了した。
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