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「急に、ここに来る方法なんて聞いてきたから、待ち合せかなと思って。」
「直也くん、さすがやな。」
ほんと、直也先輩鋭い…。
数日前の千晃とのやり取りを思い出す。
『真司郎達には、内緒だからな。』
『うん、2人でお出かけ初めてだねぇ。楽しみ。』
『そうだな。』
にやける顔を隠して、約束したんだった。
なのに、あっさりバレてる…。
若干、落ち込んでいる俺の肩を直也先輩が叩いた。
「じゃ、またな。」
「えっ?」
顔を上げると、直也先輩は真司郎の肩を掴んで、歩き出そうとしていた。
「は?直也くん、帰るん?」
「当たり前。」
「えぇ!秀太には任せられへんで。」
「大丈夫、大丈夫。」
な?と俺の顔を見る直也先輩に、俺は力強く頷いた。
「はい。大丈夫です!」
そう言って、千晃の手を掴んだ。
「秀太…。」
千晃は耳を赤くして、俺を見上げた。
「ちあちゃ~ん。」
「じゃあな。」
直也先輩に肩を掴まれ、引きずられるように真司郎も歩き出した。
「さようなら。」
「バイバーイ。」
2人きりになり、思わず無言になる。
人混みの中、近くを通った男の呟きが耳に入った。
『あのワンピースの子、超かわいくね。』
『隣のヤツ、彼氏かな。』
『いや、違うだろ。』
カチンッ。
「千晃、行くぞ。」
そいつらに見せつけるように、手を繋いで歩き出した。
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