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コピーを終えた帰り道、俺が駅まで歩くのに付き合って、杉田は自転車を押していた。
大学から最寄り駅までは徒歩10分弱と言ったところだ。
大学はローカル線しか通ってない不便な場所にあるため、俺は数駅離れたもう少し大きな街に一人暮らしをしている。
杉田は大学の近くに住んで自転車通学だ。
「あー彼女欲しいなぁ」
杉田が唐突に言った。
「もう?この前別れたばっかじゃん」
「だってさぁ、夏休みが始まるんだぞ!?」
試験が終わればもう夏休みが始まる。
確かに、夏と言えば海や花火大会に行ったり、恋人がいたらきっと楽しいだろう。
それに、大学の夏休みは長い。
「まぁね」
気持ちは分からなくもないけど、適当に相づちを打った。
「城戸は彼女欲しくないわけ?」
杉田に聞かれて考える。
俺ももう半年フリーだ。
高校時代から付き合っていた彼女に裏切られて以来、あまり積極的にはなれなかった。
もう引きずってはいないつもりだが、心がなかなか動かないのだ。
「好きな子が出来たら付き合いたいけど」
正直ときめく子がいない。
「見かけの割に純情だよなぁ」
杉田がにやにや笑ってからかうように言った。
別に純情ってつもりもない。
ただ、そこまで熱くなれないだけで。
好きでもない子と遊んだりするのは、はっきり言って、ちょっとめんどくさい気がした。
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