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あ、いた。
カウンターの中には立花さんの姿があった。
いつもと変わらない様子で仕事をしている。
…さっきの姿が嘘みたいだ。
少し緊張しながら目の前に立つと、
「こんにちは」
初めてそう声をかけた。
今までは本を差し出して必要最低限のことしか話してこなかったんだけど。
立花さんが俺を見る。
「こんにちは」
にこりともせず、あくまで事務的に返された。
立花さんが返却手続きをしている時、胸のネームプレートに目が行った。
そういえば、この間はチラッと名字しか見れなかった。
下の名前は何だろう。
ネームプレートには、『立花 薫』とあった。
たちばな…かおる。
名前まで綺麗だな。
花の香りが匂い立ってくるような。
そんなイメージが、とてもよく似合っている。
返却手続きが終わると、
「はい、結構です」
冷めた声で「もう行け」とばかりにそう告げられた。
…相変わらずのクールっぷりだ。
だけど、今日の俺は特に腹はたたなかった。
それよりも興味の方が大きくて。
薫さん…か。
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