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朝から度々カウンターの様子を見に行き、何度目かに薫さんを捕まえることが出来た。
返す本が一冊と、借りる本が一冊。それらを携えて数名の学生の後に並び順番を待つ。
しばらくして俺の番が回ってきた。
「お疲れ様です」
「……!」
俺を見たとたん、薫さんに緊張が走ったのが伝わってきた。表情には瞬時に動揺の色が浮かぶ。
「薫さん?」
そんなに身構えて欲しくなくて、微笑んで優しく名前を呼ぶと、俺の顔を凝視していた薫さんの頬がみるみる染まっていった。
「あ…すみません、少々お待ちください…」
そう言って彼が席を立つ。
担当者を変えようとしているとすぐに悟った俺は、逃げようとした薫さんの腕を急いで掴んだ。
「薫さん逃げないで。今日、一緒に帰りませんか?」
薫さんが無言で首を振る。
「待ってますから」
掴んだ腕を離すと、薫さんはすぐに奥に引っ込んでしまった。
近くにいた職員が目を見開いて彼の背中を見ていた。
いつもの仕事中の薫さんじゃ考えられない態度に、驚くのも無理はないだろう。
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