8/10

7801人が本棚に入れています
本棚に追加
/448ページ
「あの……あの…」 薫さんは言いにくそうに、つっかかりながらごにょごにょと話し出した。 「その…この前は、ごめん。酒癖悪くないって言ったのに…」 「全然。俺も気にしてないので、薫さんも気にしないでください」 「………と」 多分彼は、ありがとうと言った。 きっとこの数日間も謝りたかったけど、恥ずかしくて顔が見れなかったんだろうな。 「正直嬉しかったです。気を許してもらえて。俺は、もっともっと甘えられたって嬉しいだけですから」 そりゃ困ることもあるけど、やっぱり嬉しいという気持ちが一番大きいに決まってる。 薫さんがほっとした表情を浮かべた。怖かったのかもしれない。 嫌うことなんてないのにね。 「…やっぱり、城戸くんって優しい」 「薫さんだから」 安心していてほしくて、薫さんを見つめてにっこりと微笑む。 「……」 「……」 「えっと…雨、止みそうにないね」 長い沈黙の後、不自然に話を逸らされた。 まぁいいや、そういうとこも可愛いから。
/448ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7801人が本棚に入れています
本棚に追加