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濡れた紙を乾かしたらそうなるに決まっている。 最初からそれが分かっていた俺は笑いを抑えるのに必死になった。 「ねぇ、パリパリのふにゃふにゃ!どうしよう!」 …可愛すぎるだろ。 笑いを堪えきれなくて薫さんから見えないように顔を逸らした。 「ゆーた、聞いてる?」 「聞いてます聞いてます」 肩を揺らしながらかろうじて答える。 なんとか笑いが収まってから、薫さんに向き直る。 薫さんは今度はうちわを片手に持っていた。 だめだ。ツボすぎる。 「ゆーた…」 「はい」 「無理かも…」 泣きそうに眉を下げる薫さんに、緩む頬を全力で引き締める。 「でしょうね。弁償しかないかな…」 薫さんはしばらく何かを考え込んでから口を開いた。 「僕に任せて」 「え?」 「上手く言ってもう一冊同じの入れることにするから」 「でも…薫さん、いつも規則に厳しいのに…」 いいんですかと続けようとして、薫さんの人差し指が、俺の唇に触れた。 〝しー〟 それから彼はその指を自分の唇に当てると、いたずらっ子みたいにはにかんだ。 「うん、だから内緒にしてて?」
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