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ビビったー。 何、今の音。 誰かいるのか? ドキドキしながら音のした方を振り返る。 音は俺のすぐ後ろの棚あたりからだった。 恐る恐る見てみるが誰もいない。 もう一つ向こうだろうか。 少し歩いて、その奥の棚の後ろを覗き込むと、うずくまった人影と散乱した本が目に入った。 「いたい…」 泣きそうなつぶやきが聞こえてきて。 おでこを手で押さえているその顔を見て驚いた。 薫さんだ… 薫さんが立ち上がって本を拾い始める。 それから、上の方の棚に本を戻そうとして背伸びをした。 と思ったら、またバサバサバサッと何冊かの本が降ってきて、今度は頭に当たって落ちていった。 「もう…」 …なんだその可愛いつぶやきは。 いや、それよりも、 うるんだ瞳で片頬を少し膨らませた表情に衝撃を受けた。 バツの悪そうなその表情は、いじらしくとても幼く感じたから。 薫さんがまた背伸びをした。 …見てられない。 気づいたら、勝手に体が動いていた。
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