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まっすぐにそばまで歩いて行く。
背伸びをしている薫さんの後ろにまわると、その手から本を取ってそのまま棚に戻した。
「え…」
驚いて振り向いた薫さんと目が合う。
「わっ」
その瞬間薫さんがバランスを崩して。
とっさに俺はその肩を抱きとめた。
「大丈夫ですか?」
「……」
彼はしばし固まった後、俺に向き直るとみるみる真っ赤になった。
「…すみません。ありがとうございました」
だけどその口調はいつもの堅いもので。
「手伝いましょうか?」
「いえ、もう終わりましたから」
それだけ言うと、薫さんはすぐに行ってしまった。
残された俺は、胸の高鳴りが止まらなかった。
なぜだろう。
倒れかかってきた彼から、ふわりといい香りがしたからだろうか。
それとも…
近くで見た後ろ姿が思っていたより小柄で、
触れた彼の肩が、
思っていたより華奢だったからかもしれない。
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