城戸優太

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だけど、 映ってはいても、見てはいるのだろうか。 「すみません、でも明日必要なんです」 確かにあと一冊借りている本がある。でも、返却期限が切れていると言ったって二日過ぎているだけだ。 「二日遅れていますので、今すぐ返却しても二日は貸し出し停止です」 そう、うちの大学の図書館はペナルティーがある。返却期限を過ぎるとその日数分貸し出し停止になってしまうのだ。 「そこをなんとかお願いします!」 たった二日だ。少しくらい融通利かせてくれてもいいじゃないか。 「規則ですから」 必死の頼みも虚しく、冷たくはねつけられただけだった。 なんだよ、ほんっとにムカつく! 頭でっかち!冷血人間! むしゃくしゃしながら外に出て杉田に電話をかけた。 「もしもし、まだ学校いる?」 『いや、もう家』 「そっか、ならいい。ありがとう」 他にも何人かに電話したけど、なかなかつかまらない。 「あ、石橋さん。突然ごめん。まだ学校いる?」 『いるよ~』 「頼みがあるんだけど、俺の代わりに本借りてくれないかな?」 『いいけど、どうしたの?』 「いや、俺返却期限切れててさ」 『なるほどね。わかった、今から図書館向かう』 「ありがとう。恩にきる!」
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