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――またあの人だ。
カウンターを見た瞬間ギクっとした。
石橋さんに本を借りてもらう間、少し離れた所で待つことにした。
「今日は本当にありがとう」
「いいえー」
「あの人やっぱ性格きつそうだったろ?」
「まぁ、今日のは私達が悪かったよ。でも、確かに近寄り難い感じよね。クールビューティーっていうか」
「クールビューティーというより、冷血人間だ!」
「あははっ」
「じゃあ、俺こっちだから」
「はーい。じゃあまた明日~」
帰りの電車に揺られながら、図書館でのことを考えていた。
今日は石橋さんがいなかったらあぶなかった。
自分が悪いのは百も承知だが、それでもイラつく。
あの司書のことが思い浮かんだ。
いけすかない。
ひたすら事務的なあの態度が嫌いだ。
こっちを見てもないようなあの目が嫌いだ。
にこりともしないあの無表情が嫌いだ。
全てが気に食わない。
なぜか、最初から気に食わなかった。
むしゃくしゃしているうちに、いつの間にか降りる駅を通り過ぎていた。
「しまった」
とことんついてない。
それもこれも、全部あの人のせいだ。
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