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今日も本を借りるために彼の前に立った。昼休みのことだ。
カウンターの前に行くと、いつも少し緊張する。
何か言われるんじゃないかって。
図書館は気に入っているのだが、カウンター担当の態度が感じ悪いのが玉にきずなんだよな。
その人は、ピッ、ピッと本につけられたバーコードを機械で読み込むと、
「7/25までに返却お願いします」
そう言って返却期限が書かれた紙を一枚本に挟んだ。
何も言われないのはよかったが、こちらを見もしなかったことが少し面白くなかった。
何もないならないで、それも気に食わない。
その後急きょ授業が休講になったので、食堂で時間を潰そうかとキャンパスを横切っていた。
「あちーな」
思わずひとりごちた。
たった数分の距離にも関わらず、このところの暑さは半端ではなかった。
「あ」
周りには俺しかいないと思っていたのだが、知った人影が目に入った。
あの人だ。
どこかから戻ってきたところのようだ。
それにしても、あの人って汗とかかなそうだな。
うだるような暑さの中、一人だけ涼しい顔で歩いている。
いっつも無表情だけど、
どんなことを楽しいと思って、どんな風に笑うんだろう。
少し、見てみたいかもしれない。
興味本位でそんなことを思った。
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