城戸優太

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**** 今日も本を借りるために彼の前に立った。昼休みのことだ。 カウンターの前に行くと、いつも少し緊張する。 何か言われるんじゃないかって。 図書館は気に入っているのだが、カウンター担当の態度が感じ悪いのが玉にきずなんだよな。 その人は、ピッ、ピッと本につけられたバーコードを機械で読み込むと、 「7/25までに返却お願いします」 そう言って返却期限が書かれた紙を一枚本に挟んだ。 何も言われないのはよかったが、こちらを見もしなかったことが少し面白くなかった。 何もないならないで、それも気に食わない。 その後急きょ授業が休講になったので、食堂で時間を潰そうかとキャンパスを横切っていた。 「あちーな」 思わずひとりごちた。 たった数分の距離にも関わらず、このところの暑さは半端ではなかった。 「あ」 周りには俺しかいないと思っていたのだが、知った人影が目に入った。 あの人だ。 どこかから戻ってきたところのようだ。 それにしても、あの人って汗とかかなそうだな。 うだるような暑さの中、一人だけ涼しい顔で歩いている。 いっつも無表情だけど、 どんなことを楽しいと思って、どんな風に笑うんだろう。 少し、見てみたいかもしれない。 興味本位でそんなことを思った。
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