1

2/2
前へ
/27ページ
次へ
佐久間亜音が見上げる空は 今日も、青空。 寝転んで、空を見る亜音の顔にはたくさんの傷跡。 少し離れて、ランドセルも転がっている。 これは回想。 青いスポットライト。 ステージに立つ、高校生の亜音。 これは現在。 そして、また回想。 クラスメート数人に、殴られたり蹴られたりしている亜音。 机や椅子が散乱している。 想いが過去と未来を行き来する。 ライブハウスでは、BLUE MAKERの演奏。 亜音が、マイクを握りしめ歌っている。 ほぼ満員の客席。 髪を引っ張られる亜音。 そのまま黒板に叩きつけられる。 BLUE MAKERの演奏が続く。 グッズ売り場。積み上げられたCD。 青いジャケットに『BLUE MAKER』とある。 クラスメート数人に、殴られたり蹴られたりしている亜音。 BLUE MAKERの演奏が続く。 お腹に一撃を食らい、さらに蹴り飛ばされて倒れる亜音。 クラスメート数人は、亜音から財布を奪い、去って行く。 仰向けに転がる亜音。 青空。 滑り台の上にいる柴谷朱音。 アコースティック・ギターを抱えている。 「今、自殺とか、考えてる?」 「え?」 とぼけた声を出す亜音。 「死んでも、意味ないわ」 「え? 僕は別に」 「死にたくなったらさ、この歌思い出して」 「あの、別に死にたくないんだけど」 ギターを奏で始める朱音。 上半身を起こす亜音。 奏でられるメロディに耳を傾ける。 滑り台を滑り降りる朱音。 「神様はね、たったひとつだけ平等を作ったんだ。誰にでも、大切な 人がいるっていう平等。あんたにも、いるでしょ? 思い出してみてよ。大切な人の、大切な声。ほら、死にたくなくなってきた」 ──というか、この日の朱音のこの声が、俺にとって大切な声、になったんだけど。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加