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「うん、なんか、勉強に専念するんだって」
「早く辞めちゃえって感じだったけどね、私は。あの子無理だし。なんか気取ってて嫌」
「また始まった、若葉の僻み」
比呂太郎がそう言って笑う。
「僻んでねえよ、ボケ」
「でもライバルがいなくなって張り合いなくなったよな」
これは夕哉。
「もともとボロ負けだったじゃねえかよ。昨日の客だってほとんどRED RAIN目当てなんだ、どーせ」
「やっぱり僻みじゃん」
「うっせえんだよ、てめーはよぉ! さっきから」
「けんかはいいよ。音、合わせよ」
亜音が冷静に窘める。
ギターを弾く夕哉。
ベースを奏でる比呂太郎。
ドラムを叩く若葉。
マイクを持つ亜音。
始業ベルが鳴る。
「じゃあ、続きは放課後ってことで」
「悪い。今日は人足りないみたいで、休めそうにないんだ、バイト」
「私も無理。ちょっと行くとこあんだ」
「わかった。じゃあ俺も家で新曲とか作っちゃうよ」
部屋を出る面々。
取り残された比呂太郎。
「俺は空いてるのにな、今日」
楽譜が一枚ひらりと落ちる。
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