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「鎮目の血族には、一世代に一人、必ずこの印を持った『特別』な子ーが生まれる。
そして鎮目千年の歴史の中には、稀に姫ではなく、雪斗ちゃんみたいな花の如く美しい《少年》に、印が出ることもあったそうや」
「せやけど、我が御国家当主はあくまでも掟に従い、心から愛し、『妻』として迎えてきたという……」
親父は、今までになく静かに……厳かに言葉を向けてきた。
「一年後や―――戒」
「一年後、お前が18になった時……、雪斗ちゃんとの《婚礼の儀》と《当主継承式》を、全国の御国、鎮目一族すべてをあげて盛大に執り行う」
「ええな。 戒。――…それまではお前が雪斗ちゃんを守り、面倒をみるんや」
「戒さま……」
ただただ、言葉がでぇへん俺の前に向き直り、正座して
雪斗くんは丁寧に土下座をした。
「ふつつか者ではございますが…『鎮目 雪斗』――一生懸命つとめさせていただきます故…… 何とぞよろしくお願い申し上げます」
「……………」
いつの間にやら、とっぷりと日も暮れた。
あかん……
キャパオーバーや……
思考回路停止や……
なんや結局『巫女姫』の意味も、御国家とのなれそめもよーわからんし
……てか俺……
ピンクの胸のアレがちらついて
色々あかん状態になりそうな危機を必死に抑えつつ
親父に言われるまま、雪斗くんを、俺の部屋の隣の、昨日まで空き部屋だった場所に案内した。
親父のやつ……
いつの間に色々運びこんだんや。
上品で清楚な家具一式、見事なまでに整えられとる。
雪斗くんに、よう似合う。
くそっ…趣味だけはいいのは認めたるわ……
「あ…… ここや。君の部屋…。 俺の部屋の隣やさかい、何かあったら……その、いつでも声かけてや…」
「ええっ!? こんな広くて立派な!?」
そうなんか?
うちは、どこもかしこも無駄にだだっ広いからな。
初めての客は、必ず迷うしな。
雪斗くんは、目をまん丸にしてあちこち覗いている。
キラキラしとるがな……
なんかそんなに喜ばれると……ま、まあ…悪い気はせん。
そのうち、雪斗くんの目は、クローゼットの中に吊るしてあった《ある服 》に釘付けになった。
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