76人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
内腿に触れる大きな手のひら。
割り入ってくる骨ばった指。
肌を舐める熱く湿った舌。
私は息を殺す。
その大きな手のひらは、沙羅のあの細くしなやかな足に触れたのだろうか。
その骨ばった指は、沙羅の柔らかく濡れた場所に触れたのだろうか。
その熱く湿った舌は、沙羅の白い肌を舐めたのだろうか。
高遠君の頭を両手で挟み込み、口づけをねだる。
柔らかく絡む舌に、沙羅の舌を想像する。
沙羅の中の柔らかさを知っている、その部分が、私の柔らかい所に押し入って来る時、私は沙羅とひとつになったような幻想に囚われた。
馬鹿な私。
そこに紗羅はいないのに。
沙羅に直接触れられない代わりに、私は沙羅の触れたものに触れるんだ。
「……紗羅」
高遠君が小さく呟いた。
高遠君には私が紗羅に見えるんだろうか。
ならば、私と高遠君は同じだ。
私も高遠君に沙羅を見る。
「沙羅……」
高遠君の向こうに沙羅を見た。
沙羅がどんな風に高遠君に抱かれたかなんて知らない。知りたくもない。
それでも私は沙羅を抱いた男に抱かれることでしか、沙羅に触れられない。
沙羅の肌はどれほどの熱を持っているんだろう。
沙羅の唇は、どれほど柔らかいんだろう。
閉じた瞼の向こうに熱を感じながら、私はひたすら夢を見た。
最初のコメントを投稿しよう!