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「おはよう、菜々子」
午前の柔らかい陽射しを感じながら、大学構内にあるカフェでカフェラテを飲んでいたら、沙羅がやって来て隣に腰を下ろした。
「……おはよう、沙羅。珍しいね。この時間から来るなんて」
手に持っていたコーヒーのカップをテーブルに置いて、沙羅がニコリと微笑んだ。
「昨日、高遠の相手してやったんだって?」
単刀直入に問われて、一瞬答えに詰まった。
一限目が始まったばかりのカフェには人影はまばらだ。
私と沙羅の座るテーブルの周りは空席ばかり。
「……沙羅が振ったんでしょ。慰めて欲しいって言うから、慰めてあげただけ」
そう言ったら、紗羅は口元だけで笑った。
「高遠だけじゃないんでしょ」
私は唇を噛んだ。
「菜々子ったら、いつからそんな女の子になったの」
軽蔑するような、沙羅の冷たい目。
私は小さく息を吐いた。
「……ハイエナだって言われてるんでしょ?知ってるよ。沙羅のおこぼれを拾い食いする、ハイエナ。別に、なんて言われてもいい。気にしてない」
そう言ったら、紗羅は柔らかく微笑んだ。
「馬鹿ね。ハイエナは利口な動物よ。時としてライオンが必死に狩った獲物を横取りするような動物。ライオンを襲うことだってある」
紗羅は何が言いたいんだろう。
「……私は、沙羅から何も奪ったりしないよ」
そう言ったら、沙羅がまた口元だけで笑った。
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